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聖剣3・ホークリ
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2011強化_03
※強化作品は連作となっております。できれば01からご覧ください※
消えない痕を君に
リースが怪我をした。
モンスターとの戦いで、腕を深く抉られたのだ。
この付近のモンスターはさほど強くない…そう思って油断していたのか、受身も間に合わずまともに傷を負うなど、リースにしては珍しい。
もっとも怪我などこの旅の中では日常的な事だが、いつもと違うのは回復魔法で癒してくれるシャルロットと別行動をしているところだった。
残りのモンスターを総て切り裂いて、蒼白になっているリースに駆け寄る。大丈夫かと問うまでもなく血の量から傷の程度は知れた。血が溢れ続ける腕の付け根を縛って止血し、荷袋から傷に対し驚異的な効力を発するポトの油を取り出し、思い切りよくかけた。
貴重な油を惜しげもなく使うホークアイに、リースが一瞬「もったいない」と言いたそうな表情をしたが、そんな事にかまってはいられない。こんな時にまでそんな事を気にせずともよいのにと内心苦笑する。
油の力でほどなく血は止まり、見る間に傷の上には薄い皮膚が生まれた。思わず、モンスターであるポトに全力で感謝したくなる瞬間。すぐに動かせばまた傷が開くため、止血のために腕に巻いていた布を外し、もう一度油を塗ってから腕を固定するようにしっかりと巻きつけた。
固まっていたリースの表情がすこしやわらかく綻んだ。息を吐く。もう大丈夫。見上げ、目を合わせて微笑むと、リースは気まずそうに視線を逸らした。
このところ、リースとまともに顔を合わせていない――。
出逢った当初はお互いの立場から気まずい空気を抱き合った間柄とはいえ、旅の中で互いを理解し合い、同じ目的を持つもの同士助け合って前進してきた。仲間と呼ぶには何の問題もない程度には打ち溶け合っていると思っていたし、そうあるように努力は惜しまなかった。
それにもかかわらず。
挨拶をして返事は返ってくるものの、居心地が悪そうに身を翻される。
リースに訊ねているのに、本人が答えないから他の仲間が返事をする。
一緒に買出しにでもと思っても、そういう時には何故か決まってリースの姿が消えている。
そんな日々が続けば、さすがに避けられていると気付かざるを得ない。
けれど、何故?
「…あの、私、迷惑をかけて…ごめんなさい」
どうしてそんな風に、唇を噛んで辛そうにしているのか。
俺が、ナバールの人間だから?
未だに彼女の弟の所在を突き止めることができないのに、俺の幼馴染は無事戻ってきたから?
軽口ばかりで、真剣味が足りないように見えるから?
正直、心当たりはいくらでもある。けれど、リースはずっとそんな俺を理解してくれていたし、性格や立場の違いを超えた絆を作り上げていたはずだ。そう思っていた。
――まさか、俺がリースのことを仲間以上の気持ちで見ていることを、気付かれた?
いや、それはないと内心に浮かんだ言葉を打ち消した。
とてもそうと伺わせるような立ち居振る舞いはしていないし、例え何かのきっかけで僅かに秘めた想いを覗かせるような行動をしていたとしても、他の年頃の女性より色恋には随分と堅物で鈍感なリースに気取られる訳がない。自らへの過信ではないはずだ。
リースは僅かに顔を向け、縛られた腕を見た。
苦しそうに顰められた眉。
先ほどの痛みを思い出しているのか、それとも。
疎んずる男に触れられていることへの、嫌悪感、か。
一瞬、胸の内からむかむかとするような漆黒の塊が喉元にまでせり上がってくるような錯覚を覚えた。
先ほどまで溢れていた血はもう殆ど止まり、皮膚は再生しようとしている。
明日には、あの傷は跡形もなく消えているだろう。
そうすればリースのこの嫌悪感も消え去るとともに、この時間のことも彼女の中では思い出にすらならないのだろう。
この布を外し、癒え切らぬ傷に爪を立て、再び引き裂いてやろうか。
一生癒えぬ傷痕を、痛みを、この肌理の整った肌に、そしてその心に、この俺が、刻んでやろうか――。
リースは、未だ言葉なく傷痕を見ている。
俯いた顔。透明な色を湛えた蒼の瞳は頼りなく揺れるだけ。
手を添えた二の腕は、ホークアイの手首よりも細い。
ふ、と自然に息が漏れた。
感情を押し込めるのは、得意だ。
「大丈夫なら、行こう。皆に遅れてしまう」
リースの返事が無いことも、もう気にならなかった。
早くこの旅を終わらせなければ。
改めて誓う。
しかし、それはこれまでと全く違う理由から。
早く、この絆を終わらせてしまわなければ…。
守りきる自信がない。
早く、この胸の闇が俺自身を覆い尽くして溢れるその前に――。
ホークアイは今のところ、告げるつもりは無いんですね、たぶん。
やっと両片想いって言っても良さそうなものが描(書)けて、ほっとしております。
ホークリ強化企画サイト様*
2011.02.07 Monday