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'09ホークリ強化_07
'09ホークリ強化_07
※強化作品は連作となっております。01〜07まで、できれば順にご覧ください※
強化テーマは、『絵で辿る、ホークリ*愛の軌跡』でございます。


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 「お父様、お母様、どうか見守っていてください…」
 風猛るバストゥーク山の頂。聖域を除けば、世界で最も天に近い場所で、リースは厳かな誓いを終えた。透き通ったその声は、不思議と強い風の中であっても鮮明に空気を振るわせた。風と戯れる金糸が、ただ美しく神聖なものに思えて、ホークアイはただじっとその後ろ姿を眺めることしかできなかった。
 世界はマナの消滅と引き換えに、平和を取り戻した。
 他の皆を故郷へ見送り、ただ二人この場所に立つ。それは、リースのたっての願いだったから。ホークアイは、リースがナバールの人間である彼を敢えてこの場所に連れて来てくれた理由が解るように思った。

 「旅も、…終わりましたね。」
 
 振り返らぬまま、リースが呟く。ああ、と答えると僅かに俯いた。アマゾネスのリーダーであり、女神の力を得た彼女は、もしかしたら世界で一番強靭な女性かも知れない。けれど、その後ろ姿はどこかか細く、まるで普通の少女のそれと変わらないように思えた。
 衝動的に抱きしめたい気持ちが湧き上がるが、どうにか堪える。
 「もう…、…会えなくなります…ね…。」
 ともすれば風に流されそうな声色だったが、ホークアイの耳はどんな小さな音でも正確に捉えられるように訓練されている。そうでなくても、ホークアイがリースの声を聞き逃すはずはなかった。
 ――旅の間、二人の間で触れてはいけない禁忌だった、その事実。
 旅が終わり、それぞれの故郷へ戻れば、それぞれの復興に奔走する日々が待っている。その上、ローラントにはナバールへ対する敵対心と怨恨が根深く残ったままだ。盗賊団は操られていたのだとはいえ、それが言い訳になるはずもない。美獣のせいで散り散りになってしまったナバールには、それらの汚名を雪ぐだけの力も無きに等しい。
 どう考えても二人の関係はここで終わるように思われた。だから旅の間、どんな小さなものでも、将来に係る約束ごとを一度だって交わしたことは無かった。――できなかった。

 「リース…俺、ずっと考えていたんだけど…
 人の縁には、どんな小さいものでも必ず意味があるらしいんだ。」
 リースは前を向いたままだったが、ホークアイは構わず続ける。
 「皆や…フェアリーに出会ったことは、世界の命運に関わる大事だった。些細な、きっかけで出会い…旅をした事、それはかけがえのない、絆で、奇跡だったと思う。」

 …リースと、出逢って…恋をしたことも。

 僅かにリースの細い肩が揺れた。ホークアイは、一歩、リースへと足を踏み出す。
 「なら…俺たちがそうなったことは…その意味は、なんだろうって。」
 最初は同情かと疑い、次にローラントへ対する後ろめたさがそうさせるのかと疑った。疑いが確信へと変わっても、ずっと、告げるつもりは無かったのだ。…ひと時の幸福に溺れたとしても、その後に来るものを…予想するのはあまりに容易かったから。恋しいと思うからこそ、リースを巻き込むことを恐れたせいもある。これ以上、リースを傷つける訳にはいかないと、だから…と、何度も自分に言い聞かせていた。
 しかし、全て言い訳だと…逃げていただけだったと、気づいたからリースに真実を告げた。そしてリースも、真実を自分に返してくれたのだ。
 
 轟、と一瞬の強い風が、リースの長い髪を巻き上げた。
 構わず、優しい曲線を描いて流れるそれに触れられるほどの近くへと、歩を進める。吐息が聞こえるほどの距離。
 
 「…俺たちは、ローラントとナバールを…繋ぐ存在に、なれると思う。」
 
 一瞬凪いだ空気が、ホークアイの声をはっきりとリースに届けた。リースは動くことすらしなかったが…ホークアイは届いていることを確信していた。
 「傲慢だと…そんなことを俺が言う資格があるかと言われても当然だ…。それでも、そう出来ると思う…いや、してみせる。」
 二人なら。
 あの絶望の日々を、互いの葛藤を、そしてマナを巡る戦いを乗り越えた彼らならば、きっと。
 リースがゆっくりと振り返ってホークアイを見た。
 どこまでも澄んだ青の瞳。ホークアイが最初に惹かれた、何よりもまっすぐな光、その瞳にかけて。
 「俺は…諦めない。」
 故郷も、リースも。
 大切なもの、全てを、この先、何があったとしても。

 「…狙った獲物は、逃がさない主義なんだ。」
 何せ、盗賊だからね。
 まばたきも忘れるほど真剣にリースが見返してくれるから…ホークアイは思わずそう言って、破顔して見せた。
 リースは一瞬瞠目した後、強張る顔を笑みの形に崩した。くすくす、と、愛らしい笑い声を空に響かせ、。
 そして、それがそのまま嗚咽に変わった。

 もう堪える必要はないだろう。
 ホークアイは迷わずリースとの距離を詰め、彼女の身体を腕に収めた。
 彼女こそがホークアイの真実。無くしたりしない…絶対に。

 「私、も…諦めた、り…しません…。だか、ら…!」
 込み上げる嗚咽と共に誓うリースがただ、愛しくて…ホークアイは何度も頷きながら彼女の髪を撫で続けた。

 ふと、それまで思い出す事も無かった、過ぎ去った遠い日を思い出す。
 絶望に飲まれそうになりながら旅立ち、辿り着いたジャドの町…獣人たちに占領された町で出会った、強張った顔でホークアイに弟の行方を訊いてきた一人の少女。あのまっすぐな瞳は…。
 思えば、あの時に全て始まっていたのか。いや、もしかしたらもっと前から。

 人の縁には、どんなに小さいものでも、必ず意味がある。

 その事実を確認しながら、ホークアイは、彼女との絆が更に大きな意味を成す奇跡に繋がるよう祈りを込めて、リースの身体をかたく抱きしめた。

***************  おしまい



最後までお付き合いくださった皆様に、心から感謝申し上げます。
ご覧くださる方がいらっしゃらなければ、いくら私がホークリ好きでも
(軌跡であり、奇跡であることを祈って…。)



ホークリ強化企画サイト様*ホークリ強化期間企画サイトさま
2009.11.23 Monday
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